紗蘭広夢の俳句と街道歩き旅

二度目の東海道五十三次歩きと二度目の中山道六十九次歩きのブログを書いています。今、中断していますが、俳句も書いています。

芭蕉の館 もう一つの碑

 

那須の黒ばねと云所に知人あれば、是より野越にかゝりて、直道をゆかんとす。遥に一村を見かけて行に雨降り日暮る。農夫一家に一夜を借りて明ればまた野中を行。そのに野飼の馬あり。草刈おのこになげきよれば、農夫といへどもさすがに情しらぬには非ず。いかゞすべきや。されども此野は縦横にわかれて、うゐうゐ敷旅人の道踏みたがえん、あやしう侍れば、此馬のとどまる所にて馬を返し給へとかし侍ぬ。ちいさき者ふたり、馬の跡したひてはしる。独は小姫にて、名をかさねと云。聞なれぬ名のやさしかりければ、 

 かさねとは八重撫子の名成べし 
                曽良 


頓て(やがて)人里に至れば、あたひを鞍つぼに結付て、馬を返しぬ。

         松尾芭蕉
          「おくのほそ道」より