紗蘭広夢の俳句と街道歩き旅

二度目の東海道五十三次歩きと二度目の中山道六十九次歩きのブログを書いています。今、中断していますが、俳句も書いています。

野田尻週 お玉井戸

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お玉井戸

山梨県上野原市

野田尻が宿場として栄えていた昔、大椚から入る所に長峰の池という池があり、風趣に満ちていた。その頃、野田尻宿のえびす屋という宿屋にお玉という美しい女中がおり、近在の若者たちのあこがれの的だった。おかげでえびす屋は大賑わいだったが、ひときわ目立つ美しい若者が夜ごと通うようになった。
お玉と若者は恋に落ち、夜な夜な逢瀬を重ねたが、帰ってくるお玉がいつも全身びっしょりなのをいぶかしく思い、主人が訳を訊いた。すると、お玉は恋人は長峰の池の主であるのだという。そして、もう屋敷に仕えるわけにはいかなくなった、お暇をいただきたい、という。
わが娘のように可愛がっていたお玉であったので主人も悩んだが、ついには折れて、涙ながらに暇を出した。お玉は深く感謝して、野田尻は水が足りなくて困る土地なので、望む場所にきれいな水を出しましょう、といって去った。こうしてできた井戸がお玉井戸と呼ばれた。お玉自身が池の主の竜神だった、という話もある。

上野原町誌 下』より要約