『恩讐の彼方に』の鳥居峠での場面は、静かな中に一瞬凄絶を極める
そして ここから遠く青の洞門へと舞台は移ってゆく。
この鳥居峠には作品として最も重要な動機が設定されているのであるが
思えば、その動機の背景をこれほど見事にふさわしく偲ばせるところも
ないのである。 鳥居峠の貫禄というものであろう。
鳥居峠、時に奈良井側からの峠の、あの山の背を這うようにしてゆく
崖道は、険阻そのものであると同時に、中山道全街道を通じて
最も深い趣をもつといっていい。
兎も角、幾百年の歴史の道は、その風格とも併せて春秋ただ
素晴らしいの一語につきる。 」